-最悪な出会い-

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彼らは所謂、お尋ね者だった。 西洋の力を目の当たりにした彼らは、このままの日本では駄目だと…衰退しきった幕府ではなく、新たな強い日本国家を作らなくては西洋の国々に蹂躙されると憂いていた。 彼らは純粋に国を憂い、国の行く末を案じていたのだが、その思想は…新しい政権を打ち立てるという事は、徳川幕府を廃するという幕府に盾突く行為だ。 国を心底憂いての行動とはいえ、幕府から見れば政権を覆そうとする危険人物に過ぎない。 故に幕府や新撰組は血眼になって彼らを捜していた。 いや、捜しているのは彼らだけではない。 土佐の坂本龍馬、中岡慎太郎、武市半平太、長州の桂小五郎など…数多くの志士を捜していた。 その思想を危険視するのと、彼らが結束するのを恐れて。 だが、吉田達はそんな幕府に屈する事はなく、身を潜めながらも活動をしていた。 そして彼らは今、彼らにとって最も危険な地域とも言える京都に身を潜めていた。 それゆえに桂からも、警戒心を怠らず目立つ事のないよう、気を付けて行動するようにと、常々注意されていたのだが、見事に高杉がやらかしてくれたのだ。 往来で酔っ払いに絡まれてた娘を助けた事を責めはしない。 だが、行動が派手過ぎたのだ。 もっと穏便に済ませる事も十分に可能であったのだが、豪快で派手好きな性格の高杉には、どだい無理な話である。
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