-最悪な出会い-

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吉田に力一杯押された高杉は、当然ながら体勢を大きく崩す事となった。 「押すなってば…って、うわっ!」 ぐらりと傾いた己の身体に、高杉は慌てて体勢を直そうとするが、体勢を立て直すには身体が傾きすぎていた。 努力も空しく、高杉の身体は重力に従い横に倒れたのだった。 「きゃあ」 だが、吉田の耳に入ってきたのは高杉の呻き声ではなく、若い女の声だった。 吉田は走る足を止めると、後方の高杉へ視線を向けた。 月明かりは逆光で、視線の先の高杉の姿は、はっきりとはしない。 だが、高杉が地面に倒れているのは確かだ。 「……あのさ、一応聞くけど、今の声はお前の?」 怪訝そうに吉田が問えば、高杉は首がもげそうな勢いで首を左右に振った。 「ばっ…馬鹿言うなよ!違ぇよ!」 「だよね。肯定されたら斬り捨ててたよ。気持ち悪くて」 吉田の答えに高杉はどう答えるべきか分からず、曖昧な笑みを浮かべたが、状況がよく分からないのは高杉も同じであった。 倒れる瞬間、何かにぶつかったのは高杉も覚えていた。 ただ…その何かが何かは分からない。 (一体何が……) 状況把握をしようと、高杉は辺りを見渡したが、思わずその動きを止めた。 薄暗い月明りの中でも分かる。 高杉が下敷きにしているのが、若い女であると。 高杉は慌てて女の上から退くと、女を抱き起こした。
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