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「このまま放置すんのも目覚めが悪いからな。第一、新撰組の奴等が来るんだ。何もされない保障はねぇし」
ここに放置して行けば、まず間違いなく新撰組は女を見付ける。
運が良ければ、介抱されて何事もなく解放されるだろう。だが、運が悪ければ不審人物として尋問される。
そして、残念ながら後者の可能性の方が高かった。
女が何者かは知らないが、こんな夜中に倒れており、おまけに着ているものは西洋のもの。
おまけに、高杉達を追った先で見付けるのだ。
新撰組が簡単に解放する訳はなかった。
高杉とて厄介事はごめんなのだが、今回ばっかりは流石に高杉も、そこまで予測が付いていながら放置して行くというのは心が痛んだのだ。
少なくとも、高杉がぶつかって失神させなければ、彼女は今ここではそんな危険に晒されなかった筈だから。
何より、こんな治安の悪い今の京都に気を失った若い娘を放置などすれば、明日の朝には無惨な姿で鴨川に浮いていても不思議は無い。
「小五郎の説教確定か、ちくしょう!」
高杉はそう叫ぶと、女を抱えて吉田の後を追って闇夜の中へと姿を消したのだった。
全神経を研ぎ澄ませて新撰組の足音を探り、慎重に道を選びながらの長州藩邸への道のりは、容易いものではなかったが、それでも高杉は何とか無事に長州藩邸へ辿り着いた。
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