-最悪な出会い-

12/30

705人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ
高杉が無事に長州藩邸へと辿り着けたのは、一重に潜伏生活のお陰だろう。 潜伏生活のお陰で高杉は、京の裏道を熟知していた。 その知識が高杉を無事に長州藩邸まで導いたのだ。 「取り敢えず、ここまで来れば一安心、か…」 見慣れた藩邸を目の前に、高杉ほっと胸を撫で下ろしたのだが、それも束の間であった。 門前に佇む人影に高杉は顔を引きつらせた。 説教を受ける覚悟はしていたが、こんなに早くその時が来るとは正直思っていなかった。 「おかえり、晋作」 高杉の心境とは裏腹に、門前の人影…桂は綺麗な笑みを浮かべた。 その笑顔が高杉にはこの上なく恐ろしい。 「お…おう。戻ったぜ小五郎」 「無事に戻ってきたようで安心しましたよ」 (…目、笑ってねぇし) 顔は綺麗な笑みを称えているのに、その目は一切笑ってはいない。 それがまた高杉の恐怖心を煽る。 一体いつ桂の説教が始まるのかは、長い付き合いの高杉ですら分からないのだ。 「さて、晋作…」 (うわっ…きた) 桂の言葉に高杉は生唾を飲んだ。 褒められた事ではないが、桂の説教は過去に何度も受けている。 それでも、毎回この瞬間だけは嫌な汗が背中を伝う。 「色々と聞きたい事はあるけれど、取り敢えず…その片手に抱えている娘は?」 「あ…えっと…拾った?」
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

705人が本棚に入れています
本棚に追加