-最悪な出会い-

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言い訳にしても、もっとまともな言葉は無かっただろうかと、高杉は口にしてから自分の言葉に恥ずかしくなった。 しかし、あの瞬間はそれしか頭に浮かばなかったのだから仕方が無い。 そんな高杉の回答に桂は頭痛を覚えたのだろう。 「晋作…何で疑問系なんだい?」 片手で頭を押さえつつ盛大な溜め息を零した桂は、心底呆れた目差しを高杉に向けた。そんな桂に対して高杉は笑うしかない。 「はははは…何でだろうな?」 「晋作が分からなかったら一体誰が分かるというんだい?言い訳にしても、もっとまともな言い訳を用意したらどうだい?まったく情けない」 「あ…えっと…小五郎?」 「第一、女性をそんな米俵か酒樽みたいに運ぶなんて感心しないね。女性は晋作みたいに頑丈に出来てる訳じゃないんだから」 藩邸の門前で懇々と説教を始める桂に高杉は困惑した。 いや、正確に言うと、その説教内容に困惑した。 恐らく既に吉田から聞いているであろう…大立ち回りをした挙句に新撰組に見つかった事や、素性の知れぬ娘を勝手に藩邸に連れ帰ってきた事に関しての説教が始まるかと思いきや、桂が始めた説教内容は、言い訳に捻りが無いだとか女性の扱い方が雑だとか、まったくもって予想外な内容であった。 もしかして、桂は高杉の行動をそれほど怒ってはいないのでは? そんな淡い期待が高杉の胸を過ぎったが、それは儚い願望だったとすぐに思い知らされた。
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