-最悪な出会い-

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「そもそも、どういう経緯があったのかも…何故その娘さんが気を失っているのかも知らないけれど、何でその娘さんを藩邸に連れて来たんだい?藩邸の中に入れる事が何を意味するか、晋作なら分かっていない訳じゃないだろう?」 静かながらも、咎めるような厳しい声と視線を向ける桂に、高杉は思わず視線を逸した。 藩邸の中に入れる事がどういう事かは分かっている。 今の長州藩は秘密を数多く抱えているのだ。 長州藩が幕府に恭順の意を示していないのは周知の事実。だからこそ幕府は長州藩を警戒しているし、高杉や桂もお尋ね者なのだ。 それでも幕府が実力行使をしないのは、限り無く黒であっても明確な証拠がない事が理由として挙げられる。 そして、たとえ京都の中にあっても藩邸の敷地はその藩の土地であって、幕府といえど簡単に手出しが出来るものではないのだ。 だからこそ、高杉や桂がいると分かっていても、新撰組は長州藩邸に乗り込めないし、包囲も待ち伏せも出来ない。 そして、それ故に桂や高杉達は藩邸内で色々と画策出来る訳なのだが、言い換えれば、藩邸内には見られて不味いものが溢れている訳で、人の出入りには気を使うのだ。 一つの失態が幕府に長州藩を弾劾する口実を与え兼ねないのだから。 「藩邸の中に入れるという事は、その危険を侵すという事だ。つまり、彼女には今後同志として共に活動して貰うか、同志にならないならば悪いが藩邸内に幽閉させて貰わなくてはならない。機密が漏洩しては困るからね」
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