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藩邸の門をくぐれば、穏やかな人生はおろか、彼女が何者かは分からないが親兄弟にも二度と会えなくさせてしまうかもしれない。
今、理解した。
桂が藩邸の門前に立っていた意味を。
藩邸の中で待っていれば、高杉の連れてきた娘は桂達の同志になるか死か…の二択しかなくなる。
だから桂は門前で待っていたのだ。
高杉が藩邸の門をくぐる前に話をする為に。
高杉の連れてくる娘を、波乱の波に巻き込ませない道を残す為に。
高杉はしばしの間頭を悩ませたが、やがて一つの答えを出したのだった。
「…小五郎」
「案外早かったですね」
桂は読んでいた本を閉じると、自室の出入り口の方へ顔を向けた。
神妙な顔をして佇む高杉の姿を目にした桂は、溜め息を一つこぼした。
「それで、晋作の出した結論はそれで良いんですね?」
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