-最悪な出会い-

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本名を口にしたことが凶と出るか… 朔は男達の次の言葉を待った。 「……それで、君は何故あんな夜中に歩いていたんだい?女性が一人で歩くなど危険だろう」 九条の名に関する話題が出なかった事に、朔は少しだけ気を緩めたが、投げ掛けられたその質問に朔は困惑した。 確かに夜遅くに女の一人歩きは危険だろうが、それは人気の無い通りや公園、治安の悪い地区に限られるのではないだろうか。 「…女性の一人歩きくらい、こんな町中じゃ珍しくないかと思いますが…」 「いやいや危ないだろ」 梅之助という男に間髪入れずに突っ込まれ、朔は更に困惑した表情を浮かべる。 「…そんなに日本は治安悪くないと思うのですが?」 「はぁ?本気で言ってる?! 夜中に女が一人で歩いてたら、翌朝には無惨な姿で鴨川に浮いてても不思議じゃないって!辻斬りだって最近多いから男だって一人歩きは危ないのに」 一体、いつの間に日本はそんなに危険になったのだろうか。 少なくとも朔は今まで生きてきた中で、夜に出歩くのがそんなに危険だとは感じたことがなかった。 それに辻斬りとはまた古風な単語だ。 「辻斬りって、いつの…時、代………」 (……あれ?そう言えば何か…引っ掛かる…。何か…違和感が…) ───辻斬りって、いつの時代ですか? そう口にしようとして、朔は途中で引っ掛かりを覚えた。 何かおかしい。 はっきりとは分からないが、何かに激しい違和感を感じるのだ。
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