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彼らが何者かは知らないが、今までのやり取りや服装などから考えて、関わってはいけない人達とみて良いだろう。
そして、不味いことに朔の現状は、ちょっとした監禁状態だ。
このままここに居ることは、あまり良くないことに思われる。
(………逃げないと…)
朔は布団から出ると、枕元のショールを手に取り、襖を開けた。
目に入るのは、これまた時代劇に出てきそうな立派な日本家屋と広い庭。
あの吉田とかいった男はここを離れだと言った。ならば、廊下の先が母屋だろう。
吉田達はきっと母屋のどこかにいる。他に何人ここにいるのかは知らないが、それほど多くはないのだろう。
暫く母屋の方を見ていたが、人は誰も通らず声も聞こえない。とても静かだ。
逃げる隙はある。
だが、問題は間取りも分からないこの広い屋敷の中で玄関まで誰にも見付からずに辿り着けるのか。
玄関へ辿り着けても外へ出れるのか?
一度考えてしまうと不安は尽きない。
だが、このままここに居るわけにもいかない。一か八かの賭けに出るしかない。
朔はそっと部屋から出ると足音に気を付けながら歩き出した。
庭を通ることも考えたが、見付かった際、隠れる場所がない。
そう思い、朔は屋敷の中を移動することを選んだのだった。
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