705人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ
だが………
(…広すぎる…)
予想以上の広さに朔はすぐに絶望を感じた。
誰かに見つからないよう気を遣いながら、見知らぬ邸内を進むというのは、思いの外疲れる。
自分は一体、何処を歩いているのだろう。
出入り口に近付いているのだろうか?
(…庭を通った方が良かったかもしれない…)
邸内を進む選択をしたことを、後悔し始めた時だった。
「……まだ分からないことだらけだが、彼女はただの町娘ではないだろうね」
「九条なんて大層な名前の時点で、ただの町娘じゃないでしょ」
(……私の事?)
先程の男達と思われる話し声が聞こえ、朔の身体に緊張が走った。
見つからない内に一刻も早くここを離れた方が良い。朔は息を殺し、そっとその場から離れようとしたが、続いて聞こえてきた声に思わず足が止まった。
「それに…あの娘、日本は治安が悪くない、って言ってた。まぁ、その認識はさておき、それって、日本以外を知っているってことだよね?しかも、比較できるくらい詳しく」
(…何を言ってるの…?まるで日本以外を知っていてはいけないみたいな…。何…この人達。今時誰だって知ってる事でしょう?そんな昔の鎖国時代じゃないんだから…)
そう思った瞬間、朔は気付いた。
そうだ。違和感の正体はこれだ。
最初のコメントを投稿しよう!