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桂と高杉は吉田が刀を納めたのを見て、肩の力を抜いた。
吉田の過剰とも言える警戒も分からないではないが、まだ何者なのか分からない相手であり、五摂家の一つである『九条』の名を名乗った者を何の話も聞かずに斬ることは流石に出来ない。
本当に九条家に連なる人物であったなら、政治的問題にも発展しかねないからだ。
朔が間者なのか違うのか。
同志になるのかならないのか。
朔が九条と名乗ったあの時から事はそう単純なものではなくなっていた。
(…本当に頭の痛い問題だよ。判断を間違えれば藩に迷惑が及ぶ可能性は否定できない)
桂は隣の高杉を見ると溜め息をこぼした。
「……猶予はここまでだよ」
「あぁ。こうなったからには仕方ない。…そういう約束だったからな」
朔が何者かは分からないし、どこまで話を聞いていたのかも分からない。
だが、このような事態になっては、不本意ながらも朔を無条件で外へ帰してやることはもう出来ない。
少なくとも、朔が何者なのかははっきりさせなければならないだろう。
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