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室内では朔と向かい合うように桂と高杉が座り、吉田は朔の背後…襖の横の柱に背中を預けて立っていた。
その手は刀の柄にあり、いつでも抜刀できる体勢だ。
重苦しい空気の中、最初に口を開いたのは桂だった。
「取り敢えず、体調は問題ないのかい?」
そう問われ、朔は無言のまま頷いた。
「そう。それなら良いが、途中で気分が悪くなったら言いなさい。昨夜、頭を強く打っていることは間違いないからね」
「随分とお優しいことで。尋問対象にそんな気遣いは不要だと思いますけど?」
桂の言葉に吉田は鼻で笑う。警戒心剥き出しの吉田に桂は本日何度目か分からない溜め息をこぼした。
「体調が悪くなったらまともに話を聞けないだろう。別に私は彼女を拷問しようとしている訳ではないんだから」
「よく言うよ。場合によってはこの娘を斬り捨てるくらい平気でやるくせに」
どこか呆れたような口調で言う吉田に桂は苦笑した。
全くもってその通りなのだが、今ここでそれを言わなくても良いだろうにと思わずにはいられない。
ちらりと朔の方を見れば、明らかに顔が強張っているし、膝の上の手はきつく握りしめられ全身で緊張しているのが分かる。
だが、吉田の殺気に当てられても尚、取り乱すことなく冷静さを保とうとする姿には感心する。
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