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もともと、ミツルは田舎で母親と二人暮らしだったのだが、その母親が突然の急死。身寄りも無く、生活能力も無い彼が路頭に迷おうという時、急に学園の入学証明書が送られてきたのである。
超難関校とも言われるだけあって、そこでは学生として十分過ぎるほどの生活が出来る環境が与えられる。これに関して全く身に覚えは無かった彼だが、一縷の希望を胸に故郷に別れを告げてきたのであった。
「うーん……こりゃ、完全に迷っちゃったかなぁ……」
車も走らないような村から出て来た田舎者には、あまりに急過ぎる都会デビュー。証明書の付属で送られてきた地図もたいして役には立たず、彼の目的はいきなり大きな壁にぶつかってしまった。
地図と睨めっこをしながら、唸るミツル。そこへ、後方から涼やかな風の音と慌てふためく少女の声が急速に近付いてきた。
「ひゃぁああ~!遅刻!これは大遅刻だよ―――!」
「え……っ?」
振り返った彼の視界に映し出される、雪原のような真っ白な景色。次の瞬間、彼の身体は強い衝撃を受けて突き飛ばされていた。
「うわっ!?」
「きゃあああっ!?」
二人分の声が交錯して、影が重なる。チカチカとミツルの目蓋の裏で星が煌めき、今にも意識が飛んでしまいそうになっていた。
「う……うぐ…………ぅ?」
身体を起こそうとして、奇妙な違和感。違和感。なんだか、妙に息苦しい。まるでフカフカのクッションがおもいっきり押し付けられているような―――
「う~……痛いです……」
意識が飛びかける直前に聞いた声が、すぐ近くから聞こえてきた。具体的に言うと、自分の頭上ほどの場所から。
すると、あれほどキツく押し付けられていた柔らかさが、ゆっくりと離れていく。
やっとこさ酸素の取り込みに成功したミツルだったが、その視界に映るのは紺色の世界にそびえる二つの山。
未だ、頭がボーっとしていたせいか。そんな光景を前にミツルの取った行動は―――
「…………」
むにゅり。
柔らかい。
むにゅむにゅ。
凄く柔らかい。
むにゅもにゃむにゅ。
凄く柔らかくてモッチリと弾力が―――
「あ、あの~……」
「……え?」
手の平で小山の押し返してくるような弾力を楽しんでいたミツルは、ハッとしたように顔を上げた。
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