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「ち!」
大きく舌打ちをして、鬼は彼等から離れる。
「判ったよ。しょうがねえなあ」
そう言って、つまんねえ!っと愚痴を言いながら、離れて行った。
兵士達は、ほっと息を吐くと再び移動を開始した。
僕も実は、ほっとしたんだよね。
もしも、鬼が実力行使で僕の腕をもぎ取ろうなんてしたら、仲間達が黙って無いと思うしね。
絶対に。
そうなったら、魔王と会う事なんて、無理になってしまう。
きっと・・・・・・逃げてしまうだろうしね。
僕は、懐かしい城の中を見ながら移動する。
あの手入れの行き届いた美しかった城は、見る影も無く薄汚れて傷だらけで・・・・・。
多くの場所に血の染みがついていた。
皆が、笑顔で仕事をしていた廊下は、小さな魔人の子供と思われる者達が懸命に掃除をしていた。
でも、横を通る魔人に、邪魔だと蹴とばされ殴られ・・・・・それでも、掃除をするしかなくて。
傷だらけで、細く痩せて汚れて・・・・・・・。
僕は思わずめまいを起こしていた。
昔の僕を思い出してしまったから。
昔の僕と一緒だと思ってしまったから。
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