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「ふん!漸く、少しは怖くなったか」
あざ笑うように言う兵士。
僕の身体が震えていたから。
僕の中の多くの仲間達が、僕を励ましてくれる。
大丈夫だって。怖くないって。安心してって。
うん。判ってる。
大丈夫。僕は昔の僕とは違う。
皆と何時も一緒なんだもんね。
そうだよね。怖くなんか無い!
僕は次第に落ち着きを取り戻し、前方を見据える。
もうすぐ、謁見の間。
そこに、魔王が居る。
長い通路も漸く終わり、正面に大きな扉が見えた。
大きく立派な扉だ。
「魔王様。失礼します!」
兵士の中の二人が、扉に手を掛けて大きく開く。
それと同時に、悲鳴と鳴き声に咽かえるような血の匂いが溢れ出て来た。
僕だけじゃなく、兵士達までもが呻く。
余りの喧騒に瞬時躊躇うも、兵士長の合図でそのまま僕たちは中に入る。
中は本当に、血の海と言っても良かった。
多くの人間の首が並べられており、どれも苦悶の表情を浮かべている。
部屋の隅に無造作に積み上げられた首の持ち主であっただろう、男性の身体。
そして、正面には裸にされて、凌辱されている女性達。
襲って居るのは勿論魔人達で、どれも人間からは程遠い姿をしている。
その中央の一段高い玉座から、満面の笑みで見ながら生きたままの小さな子供の腕を引きちぎり齧る魔王。
兵士長は、青ざめながらも魔王の前に言って膝をつくと言った。
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