魔王の前で

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リン・・・・・リン・・・・・。 僕の心に呼びかけてくる声。 優しいカーナとノアールの声。 ああ・・・・・・・そうだ。 皆、僕と一緒だったんだよね。 一度は閉じていた瞳を、僕は、再び開ける。 「ほお・・・・・防御の陣無しに生きてるか・・・・・・。 しかも、これだけの封印具をされてまだ、意識が有るのか。 中々に興味深いガキだな」 にまあっと笑う魔王の鋭い犬歯が見える。 僕はコクンっと唾を飲み込んで言った。 「随分と・・・・・・・ボロボロになってるね。この城」 僕の言葉に眉を寄せる魔王。 「な・・・・・んだと?」 僕は笑顔で言った。 「昔は、綺麗な薔薇園が咲き誇って美しい城で、皆、笑顔で城の中を行き来してたよ? なのに、今の城は苦痛と怨嗟と呪いの声で一杯。 悲しくない?苦しくない?」 僕の言葉に、驚いた様子で魔王が少し後ずさる。 「な・・・・・・貴様は、人間ではないのか?」 兵士達は、警戒して僕から少し離れる。 僕は、うねうねと身体をくねらせて何とか起き上がると、一瞬で拘束具や魔封じを跳ね飛ばす。
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