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運命の相手…。簡単に見つかったなら、こんなに心の奥に憂鬱を抱えて生きていない。
人よりも知らなくて良いことを知ってしまっている分、晴れる事のない焦りを感じて生きてきた。
断片的な前世の記憶と左手の甲にある∞の痣。普段見えないそれは、熱を帯びると浮かび上がる。
「大翔♪お前も頼んどく?」
「あ?また武史のおじさん、手伝えって?」
「人手が足りないからじゃねぇみたいだなぁ。
お前集客力高いからなぁ、しゃべらなければ。」
「愛想なくて、悪かったな。」
高校から毎年夏休みのバイトで、武史のおじさんがオーナーをしているこのプールを選んでいる。それは単に稼ぎたいとか、そういう理由じゃない。
「けどさ、探さなきゃいけないんだろ?∞マークの女。」
中学からの親友・石井武史。
こいつにはどうやら俺が探さなきゃいけないらしい、俺と同じ痣を持つ女の話をしている。
一人で背負えない分、こいつは快く肩を貸してくれた。
『だから言ってるだろう?
今のお前は、いつか出逢う彼女に誇れるのか?
女遊びを繰り返し、喧嘩に明け暮れて。』
『関係ないだろ!』
『俺が彼女の親なら、いくら運命だろうと、お前に娘は渡さない。』
『頼んでないっての!なんで前世に振り回されなきゃいけないんだよ?
何なんだよ?』
『お前が持って生まれた、記憶だろ。
俺は、その断片を少しだけ知っているだけだ。』
高校生になった頃、俺は完全に振り回されていた。
何故、俺じゃなきゃダメなんだと、自分を呪った。
ただ、逃げたかった……
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