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冬。凍てつくような寒さの中、男は広すぎる屋敷の中で白い息を吐きながら掃除をしている。拭いても拭いても彼一人ではいつまでたっても終わらないだろう。
「秋斗……」
彼を呼ぶ声がした。彼は少し怯えたように後ろを振り返る。
「亜結お嬢様………あっ…何か御用でございますか?」
秋斗と呼ばれた男は拭き掃除をしていた手を止めお嬢様の方を向きお辞儀をする。
「お父様が至急秋斗を連れてこいと、おっしゃってましたよ。」
少し悲しそうな目をする彼女にたいし秋斗はすぐ向いますといい掃除道具を片付け、三階にあるこの屋敷の当主、月見里 巌(ヤマナシ イワオ)の部屋へと急ぎ足で向かった。
「巌様、ただいま参りました。」
「うむ、入れ。」
短い返答があると秋斗はまるで今から面接でもするかのようにドアを開けたのだった。
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