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その部屋は20畳ほどの広さで図書館のように難しい本が何千冊もあり、真ん中にデスクがあるだけの殺風景な部屋だ。
一分ほどの沈黙の後読んでいた本を閉じ巌は口を開いた。
「我が月見里系列の病院で見ていたお前の母親のことだが先ほど絶命したそうだ。」
まるで蟻が一匹踏み潰されて死んだ。そんな口調で巌は秋斗へと残酷な宣言をする。そんな宣言を前に今にでも巌へと襲いかかりそうな自分の内なる心を必死に殺していた。
「そう……ですか…」
秋斗のたった一人の肉親だった。父親は秋斗が生まれてすぐに事故で死んだ。彼にとって母親とはこの腐った世の中で唯一心を許せる存在だったのだろう
「それだけだ。この屋敷から出て行く、出ていかないはお前が決めろ。」
そう言うと巌はふたたび難しそうな本に目を通し始める。もう部屋から出て行けということだった。それを見て秋斗は失礼しますといい部屋を後にした。
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