第一章 地獄

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その後救急車に一緒に乗ろうとした秋斗は、警察からの事情聴取ということで母親についていってあげれなかった。 事情聴取は3時間程で終わったのだが目撃者はいなかったらしく警察でもお手上げの状態だった。   「先生!!母さんの容体はどうなんですか!!!」   警察の事情聴取のあと急いで病院に向かった時には手術がちょうど終わった後だったらしく先生にすぐに話を聞くことができた。   「親族はあなただけということでしたので正直に申し上げます。」   ごくり…息を呑む秋斗に対し医者はあまりにも残酷な宣言をした。   「助かったことに関しても奇跡でしょう。しかし脳にかなりの衝撃があったようで……………」   「はっきり言ってもらえませんか!」   少しイラついた様子で秋斗が言う。それは医者に対してでも轢き逃げの張本人の運転手に対してでもなくあの時守ってあげれなかった自分にイラついているのだった。と、同時に医者も覚悟を決めたように話し始めた。    「もう二度と起き上がって普通に生活することはできないでしょう…」   あまりの衝撃で涙すら出なかった。あと一年ちょっとで秋斗は念願だった母親と一緒に暮らすことができたはずだったのだ。   「母さんには会えないんでしょうか?」   「手術は終わりましたので今病室にいます。」   秋斗は病室の位置を詳しく聞くと自分の母親の無残な姿を見に行くのだった。
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