sideA

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 「してよ」  「何、を―――」  「分かるだろ? 君はこの状況に既視感抱いてるんだから」  綺麗な形の唇が、私を嵌める罠を仕掛ける呪文を唱える。  やっぱり、私が先輩に勝てることなんてなくて。  だから私は、今日も逃げ出したい。  だけど逃げることは出来なくて―――  それに本当は。  コーヒーを流しに置きっぱなしにした時点で、わたしが罠をしかけていた。  彼から……私に近づいてくるように。  足音で、香りで、その存在感で。  ―――アナタを感じる私と、シカンするあなたと。変態なのはドッチ?  「今日だけ、ですよ」  「さぁ、どうだろうね」  蠱惑的に笑う先輩を憎らしく思いながらも、そっと手を伸ばして頬に触れ。  その綺麗過ぎる唇に、私は今日も唇を重ねた。  ねぇ、犯罪でもいいから。  今日も私だけを見ていて―――  (fin)  ―――sideA  24.4.5
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