1 挑戦状

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「部下が始まりゃ分かるだろようよ。じゃあな、便所にまで着いて来なくていいぜ。連れションはキモイから無理だから着いてくんなよ」 小林を軽くあしらって、トイレの中へ逃げるように入った。 はぁ。またしても深い溜息をはいて鏡を見つめる。野球をやれば自分の目指す道が見えてくるとは思う。 だから投手だろうが捕手だろうが、なんだらうが野球からは逃げない。これまでも、これからも。 特に用を足そうとしてここへ来た訳でもない。やることなんてないので仕方なく教室に戻るために、トイレから出ようとする。 「面倒くせぇ…こう便所までの往復を無駄な労力使わされたし」 独り言を呟きながらトイレから調度出た瞬間であった。特に周りを気にせず出てしまった。 死角から誰かが走りこんで来ていた。気がついた時にはもう遅い。完全に避けられる距離では無かった。 「ゲッ…」 「えっ、ギャー!!」 悲鳴に聞こえた女の子の声。お互いがぶつかりあって二人は軽く後ろに吹き飛ぶ。 ドタッという大きな音をたてれば当然廊下にいた他の生徒から一気に見られた。
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