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午前7時――
ムラクモ居住区のとある個室で、少女は赤色のボサボサしたポニーテールを揺らしながら料理を作っていた。
「お弁当お弁当美味しくなーれ美味しくなーれ♪」
不思議な歌を歌いながら左手でフライパンを揺すり、右手に持つ箸でフライパンの上で炒められている野菜を適当に混ぜる。
「今日のオカズは何になるぅー?何になっちゃうー?」
楽しそうに料理をしている少女。
そんな彼女に先程から背後にいる青年が声をかける。
「おーい、そこのフライパンに暗示かけてる調理人」
「ん?なぁに?」
「俺の工業用オイル知らねぇーか?昨日の晩、そこのテーブルに置いたんだけどよ…」
顔面の上半分が隠れる程に前髪が長く、寝癖のレベルを超えてる程に乱れた銀髪を乱暴に掻く青年。
その唇は不機嫌に歪んでいる。
少女はガスコンロの火を止め、着ているエプロンのポケットから『OIL』と赤い字で綴られた缶を取り出した。
「オイルってこれ?」
「ああ、そうだ。つか……何でお前が持ってんだ?」
「野菜炒め作ろうかなってサラダ油探したけど見つからなかったから代わりにーって」
「……って事はまさかお前…」
「ん?どうしたのネオ?」
未だ自分の失態に気付かない少女に、「ネオ」という青年は心底呆れたような深いため息を吐いた。
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