これが13班!!

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「もぉ~、ヒドいよネオってば…」 午前8時30分。  廊下で少女はプクッと頬を膨らませる。 彼女の長い前髪を真ん中分けにして堂々と外に曝(サラ)している額は赤く腫れていた。 「黙れデコッパチ。ヘタすりゃ発火事故が起こり兼ねないんだぞ。オイルと貴重な食材セットを無駄にしたんだから少しは自重しろ」  ケッ…と悪態ついてそっぽを向くネオ。 彼は今朝自室にいた時とは違い、白い大きな目が2つ描かれた水色の奇抜なフードを被っている。 その珍しい格好が目立つ為、廊下ですれ違う人達の視線を自然と集めているが彼は全く気に止めていない。 「分かってるよぉ…。でもさぁ……」 少女はネオの左手に持つスパナに目を向けた。  「ソレでおでこ殴るのは勘弁してよぉ…。ケッコー痛いんだよ?」 「このビルが燃えるのとくらべりゃそれぐらい安いモンだ」 それでも納得がいかない少女は「むぅ~」と拗ねた表情を浮かべて背後に振り返り、後ろを歩く青年に向き合った。 「ねぇケイト、私そんなに悪い事したのぉ~?」 自分より背の高い青年に涙目で尋ねる。  すると「ケイト」と呼ばれた青年は少女の赤く腫れた額を紺色の布に包まれた右手で優しくゆっくり撫でた。 手を離すと、不思議な事に彼女の額にあった腫れが消えている。  「ネオさんの言う通り熱したフライパンにオイルを入れるのは危険極まりない行為です。それに人が食す物にオイルを入れたらそれを食べた僕達はきっと体調を崩してしまいます。それは嫌とは思いませんか、アヤメさん?」 丁寧に嫌な顔ひとつせず「アヤメ」に誰でも知っているであろう常識を長々と説明する。 その間のアヤメは、窓から射し込む太陽の光に照らされるケイトの笑顔に神々しさを感じていた。 それは彼の髪の毛が白いからか彼がずっと笑顔だからかは分からない。 「つまりアヤメさんに分かりやすく言うと…あなたのちょっとしたドジが事故に繋がる前にネオさんが食い止めたというワケです」 とにかくアヤメは、神を信仰する神父や牧師の説法を聞いている気分だった。
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