1人が本棚に入れています
本棚に追加
「ま、精々頑張ってくれや。俺は祈ってるよ、お前ら六人の無事を、な」
そう言うと、説明者は立ち去ろうと私達に背を向けた。
しかし、動こうとしない。
「……やっぱさ」
「……?」
「俺の名前、良かったら覚えててくれな。安藤帝輝って名前」
そう言って、今度こそ私達の目の前から去った。
…覚えなくていいとか言っておきながら、やっぱり覚えてろ、なんて…本当、変なの。覚えてろって命令系で言った訳じゃないけれどね。
「なんか、不思議な人だね、帝輝さんって」
「……そうね。何か…不思議」
この先、説明者とはきっと逢わない筈なのに、安藤帝輝とはまた逢えるような、そんな気がした。
―部屋が静まり返った時。
あの放送が、鳴り響いた。
『ガガッ…ザーッ……各狩り部隊解放組に告ぐ、ゲーム開始時間までに狩り部隊の準備を済ませておくこと。全Tabooに告ぐ、ゲーム開始5分前に放送を流す。それまで大人しくしていろ』
「……本当に、始まっちゃうんだね…ゲームが…」
朗人が不安そうに音が聴こえてきた方を見る。
そう…ゲーム開始の準備が着々と進められていく。時間は止まらない…止められない…。
「……まぁ、そのー…何だ。よろしくな、桜花…だったか?と、朗人…?」
「あ、うん。よろしく、紘汰くん」
突然、美月紘汰と卯月雅禾が一緒にこちらへ来て、挨拶らしきものをした。
「……よろしく、私は桜花でいいから」
「クールビューティみたいに感じだね。ウチも雅禾でいいから!よろしくね、二人とも」
愛想のいい雅禾と、少し不器用っぽい紘汰。この二人が、凶悪犯罪をしたとは思えない程、純粋で真っ白に思えた。
最初のコメントを投稿しよう!