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「…ねえ、朗人…くん…」
「何?あ、くんは要らないよ?」
何とはなしに話し掛けてみたものの、何を話そうかと迷っていると、朗人はクスリと笑って、
「君の名前、教えてよ。僕のだけ訊くって、不平等でしょ?」
そう言えば、名前を言っていなかった。
朗人のもっともな意見に納得し、自分の名前を伝える。
「水無月……水無月、桜花」
「みな、づき…おう、か…?」
朗人の驚いた様な表情に、首を傾げる。それに気付いた朗人は、何でもないよと、笑った。
「朗人く……朗人、も…名前以外、記憶が無いの…?」
「うん。僕も、何が何だか解ってないんだ…。みんなより、早く目が覚めただけで…」
「………この人達も…同じ、か…」
部屋全体を見渡し、目線を柵の方へ向けた瞬間―
『―ザザッ…ザーッ……全Tabooに告ぐ、只今から、ゲームの説明を行う。繰り返すぞ。全Tabooに告ぐ……』
「……タブー…?ゲーム…?どういう事なの…?」
「…今の放送みたいなので、みんな起きたみたいだね」
朗人がそう言うと、今まで寝ていたであろう他の者たちがゆっくりと起き上がってこちらを見た。
「お前らは…?」
「…っ……頭、痛い…」
「何、ここ……」
「うぅ…っ」
私と朗人以外の四人…これで全員が目覚めた様だ。この部屋以外からも、声が聴こえてくる事を考えると、自分達の他に同じように捕らえられた者達が居るのだろう。
これから、何が始まるのか。
そう思ったと同時に、またあの放送が鳴り響いた。
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