11人が本棚に入れています
本棚に追加
ばあちゃんがいなくなって、店のシャッターは下りたまま、新年を迎えた。
僕らはと言えば、空き地で三角ベースをしながら、物足りない毎日を過ごしていた。
そんなある日、東京から帰ってきたばあちゃんの甥っ子が、店を再開するらしい、とビッグニュースが飛び込んできた。
学校から急いで帰ると、僕はいつもの空き地に向かう。
「カズヤ、遅いわー」
遠くから聞こえたタケシの声に、走るスピードを速める。
タケシとコウヘイが座る、空き地の前のガードレールにたどり着く頃には、僕は完全に息が上がっていた。
「しょうがないじゃん、家からここまで、一番遠いんだから」
「なに言うてんねん、クラス1足速いくせに」
「そうや、そうや。10円ガム、奢りやな」
二人には、僕の言い訳など通用しないのだ。
「ばあちゃんの甥っ子って、どんなヤツなんかな?」
「ええヤツに決まってるやん! 店継いでくれはったんやから」
僕らは、ワクワクしながら店を目指した。
.
最初のコメントを投稿しよう!