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「みんなー聞こえるかー。イバン様のケケテテ狩りの行列だぞー。腕に自信のある者は、仕官を申し出ても良いぞー。容姿に自信のある女は、お妃候補に名乗りでよー。」
駱駝に似た、四足動物に跨がり、山道を進む20人程の男達。
その先頭を徒歩で歩く、年の頃10才前後の紅髪の少年が、人家の疎らな、四方の山に向かって、大声で叫んでいる。
「ははは。おい、ロウ。そんな口上、誰から教わったんだ?
ゼゼ爺か?」
灰色のやや長い髪を、初夏の風に靡(ナビ)かせながら、ケケテテの手綱を操る青年が、紅髪の
少年がをからかう。
「ひっでーなイバン様! 昨日寝ないで考えた口上だよ。」
ロウと呼ばれた少年は、大袈裟にその頬を膨らませて見せたが、すぐまた、先程までの口上を
繰り返し叫んだ。
「みんなー聞こえるかー。イバン様のケケテテ狩りの行列だぞー。腕に自信のある者は、仕官を申し出ても良いぞー。容姿に自信のある女は‥‥
初夏の日差しは透明で正直で、
緑一面の野を転げ回った風は緩慢な暖かさである。
一行の進む道の先、坂の頂上に
、陽光を浴びて立つ三つの人影が見える。
「お妃云々はさておき、屈強な若者は、喉から手が出る程欲しい。」
ケケテテの上、手綱を操るマナエル イバンは、誰にも聞かれぬよう、小声で呟いた。
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