マナエルの里

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  「おい、少年。見た事の無い服装だが、何れの国から来た?」 細い山道。ケケテテの手綱を見事に捌きマナエル イバンは輪乗りをする。 そのイバンのケケテテの脇に、後方から進み出てきた、痩せた黒髪の青年が乗るケケテテが、頭を寄せる。 「ラチー案ずるな、少年だ。」 イバンは、その黒髪の男に声をかけ、再び少年に問いかける。 「どうした少年、耳が無いのか?」 ケケテテの背は高い。それに乗るイバンの顔は少年の目の高さから見ると、太陽を後ろにしている。 少年は、その黒く翳(カゲ)ったイバンの顔の表情を読み取る事は出来なかったが、イバンの強い好奇心だけは、言葉の端々で感じ取る事ができた。 「別の星です。」 少年は、ただそれだけ答えた。 「‥‥‥‥ほう。面白い事を言う。」 そう呟くイバンの隣で、ラチーと呼ばれた青年が、サーベルの柄(ツカ)に手をかける。 イバンは軽く自分のケケテテの腹を蹴り、ラチーのそれと少年の間に割って入る。 「少年、言うことも面白いが、 話し方も面白い。口の動きと発する言葉が噛み合っていないぞ。」 「‥‥‥‥」 少年が次の言葉を探しているとその腕を掴んでいた少女の手の力が、すっと消えた。 少女は、投げ捨てられた絹のスカーフの様に、音もなく地に倒れた。 その美しさを目にしてしまったイバンは、初夏の陽光を浴びながら、刹那の間、瞬きを忘れていた。  
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