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「お前ね…、俺の事より自分の事考えろよ」
「…良いの、俺は悟くんの方が大事だから」
深い溜息を付いて、男に視線を戻した悟くんはもう一度手を振り上げて…。
「悟くん!!」
「う"っ…!?」
薄暗い教室に、俺の叫び声と小さなうめき声…そして、バチーン…って言う何かを叩く音。
「コレでチャラにしてやるから、二度と春に関んな」
男の頬は、暗がりでも分るくらい赤くなっていて悟くんに叩かれたんだって分った。
俺の腕を解いて、男の上からどいた悟くんはぎゅって俺の事を抱き締めてくれた。
「き…季羽くっ…」
震える声に呼ばれて視線を向けると、今にも泣きそうな男と目が合った。
「季羽くんは俺のものなのにっ…!!」
「おめーのじゃねーっての、春は俺んだ!!」
叫ぶ声に被せるように発せられた悟くんの言葉…
悟くんの低い声…
背筋がゾクっとして、不謹慎だって分ってるけど…心臓がドキドキと高鳴った。
「悟くん…」
首に腕を絡ませて、無理矢理視線を俺へと向けさせれば…そのまま噛み付くようにキスをした。
一瞬、悟くんの身体がビクって跳ねたけど…
直ぐに俺を抱き締める腕に力が篭って、何時もみたいに甘い…甘い深いキス。
バタバタ足音が走り去っていくのを頭の片隅で聞きながら、俺は悟くんに溺れたんだ。
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