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「………好きだよ、…俺は、春の事が好きだ」
いつの間にか、痛い位抱き締められていた腕は緩んでいて…
あれだけ顔を見るなと言っていた悟くんの顔をみつめていた。
顔を真っ赤に染めて、期待と、不安と入り混じった複雑な顔をしてる…
普段から下がっている眉をさらに下げて…、俺の言葉を待っている。
何も言わない俺に、悟くんは視線を泳がせた…
何か言わないといけない、今の気持ちを伝えなきゃいけない…
そう思うのに、口が動いてくれない…
のどが、からからで声が出ない…
「春……」
もう一度優しい声で名前を呼ばれて、温かくて綺麗な手で頬を包まれた。
近距離で見る悟くんの顔は、うっとりする位綺麗で…可愛い。
「春…、好きだよ…」
何度強請った言葉だろう…
――悟くん、俺の事すき?
―――悟くん、好きって言って!
俺が強請るたびに、悟君は優しく笑ってくれたんだ。
―――好きだよ、春くん。
嬉しかった、でも寂しかった…
「ほ、んと?…おと、とじゃ…ない?」
頬を包む悟くんの手に、自分の手を重ねる。
我慢してたのに、必死に我慢してたのに…堪らず涙が溢れ出た…
頬に涙が流れるたびに、悟くんは優しく拭ってくれた。
「弟の春くんが好き、でも…俺の事が好き過ぎてボロボロ泣いちゃう春も好き」
―――気付くの遅れて、ごめんね?
悟くんは、俺の目をまっすぐに見て、照れ臭そうにいったんだ。
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