🍀あと一歩 春編

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「初々しかった春も、もうアラサーかぁ…」 「それを悟くんが言うの?」 俺の肩に凭れ掛かって、深い溜息をつく悟くん… 自分何て三十路になったくせに…。 でも、確かにあの頃は若かった… 眼の前の事しか見えなくて、この人の事しか見えなくて… 我武者羅にもがいてた。 時計の針が、ゆっくりと進む… あ、もう直ぐ12時だ…また、新しい1年が始まる。 「…春…」 ぼんやりとアナログ時計を見つめて、 長針が天辺をさした瞬間、強い力で襟を引っ張られた。 目の前には悟くんの顔、唇には柔らかな感触。 「…お誕生日、おめでとう」 目を丸くする俺とは対照的に、満面の笑みを浮かべる貴方。 今日の主役は俺なのに、何で貴方がそんなに誇らしげなの? 俺は自然と笑っていて、ありがと!って抱きついた。 「悟くん、俺の事…好き?」 「好きじゃねぇよ、愛してる…」 何度も何度も喧嘩して、何度も何度も泣いたけど… 今日も、俺の指には不恰好な指輪がはまっています。 少しの不安を、少しの勇気でかき消して… “一歩”先には、幸せな結果が待っているから。 _
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