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初めて春の泣いている所を見た次の日。
久しぶりに眠る前にキスをして一緒に寝た。
春は本当に嬉しそうで、ニコニコしながら俺の胸に顔を埋めている。
「ねぇ、春くん…」
「何?悟くん…」
クリクリした丸い目で俺を見つめて、ちょこんと傾げられた首が…可愛いって思った。
「…春くんは、嬉しそうだね?」
俺の問い掛けに、きょとんとした表情を浮かべてから、照れたように顔を赤らめて小さな声で呟いたんだ。
「だって…、悟くんの傍に…居るから」
また、胸がズキンってした。
俺は、してはいけない事をしたんじゃないかって、
結局は自分の好奇心を満たす為だけに春の気持ちを弄んだんじゃないかって…そう思った。
「そっか…」
俺は、それ以上何も言えなかった。
もやもやとした気持ちを抱えたまま、春の誕生日まで1週間という日まで来た。
「春くんも、もう二十歳かぁ…」
ほぼ毎日の晩酌、春は俺のグラスにビールを注ぎながら嬉しそうに頷いた。
子供の成長は早いと言うけど、俺の中では春はまだまだ子供で大人と言われても違和感は拭えなかった。
「ねぇ悟くん…今年は何くれるの?」
物思いに耽っていれば、春に話しかけられた…
毎年春への誕生日プレゼントは、俺なりに趣向を凝らしてきたつもりだ。
毎年、違うものを結構前から用意して…勿論他の兄弟のプレゼントだって趣向を凝らしている。
でも、何だろう…初めての弟だからかな…思い入れが強いんだと思う。
って、この時は思ってた…
「うーん…、まだ考え中かな」
今年は全く思いつかなかった。
コイビト何ていう関係になった事で、今までと一緒じゃ駄目なんじゃないかとか、色々考えてたから…
何時もならもう少し飲んでから寝るけど、何となく気まずくて俺は早々に部屋に戻った…
………勿論、一人で。
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