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玄関の扉がこんなに重いと感じたのは初めてだ。
胸に抱えた通勤鞄も心なし、重いような気がする…。
「お帰り!春ちゃん」
帰宅した俺を出迎えてくれた美咲。
俺は、挨拶もそこそこに美咲の腕を引っ張って有無を言わさず自室に連れ込んだ。
「…春くん?」
途中、リビングでくつろぐ悟くんが視界に入ったけど、今はそれ所ではなかった。
大きな音を立てて自室の扉を閉めて、ほっと一息ついた。
「…ど、どうしたの?」
驚いた顔をした美咲の顔を見た瞬間、ホッとしたと言うか、気が抜けたというか…
とにかく安心して、泣けてきた…
「みさきぃ…どうしよぉ…」
座り込んだ俺の身体を支えながら"本当にどうしたの!?"って心配してくれる美咲に、俺は鞄から一枚の封筒を取り出して差し出した。
恐る恐る封筒から取り出されたのは一冊のアルバムだ。
「…春ちゃん…これ」
アルバムの中を確認した美咲は、眼を見開いて俺とアルバムを交互に見た。
「…お、お見合いを…しないかって…」
それは、30を目前にしても浮ついた噂の一つも無い俺を哀れに思った上司からの贈り物。
綺麗に着飾られた女性が映る、お見合い写真だった。
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