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俺には悟くんが居る。
だけど、そんな事いえる訳が無くて…上手く断れず受け取ってしまったんだ。
「馬鹿だなぁ…理由なんて適当で良かったでしょ」
「言うなよ…上司命令でもあるんだ」
「じゃあ、大人しくお見合いして結婚するの?」
…結婚なんてしたくない。
俺には、悟くんと言う一生を誓った人が居るのだから…。
「…嫌だよ、…俺には悟くんが…」
「じゃあ、早く断ればいいのに」
分かってる、分かってるけど、断れないから困ってるんだろ!!
「悟兄ぃに相談したら?」
出来るものならお前を捕まえたりしない…
だって、断ること前提だとしても恋人がお見合いだなんて気分の良い物じゃないはずだ。
少なくとも、俺は嫌だ…絶対に嫌だ…。
「…悟くんには、言わない…」
「…言わない方が、バレた時怖いと思うけどね…」
大きな溜息をついた美咲は、軽く頭を掻いた後"2人で考えよ…"って、俺の肩を優しく抱き寄せてくれた。
翌日には、妙にノリノリな上司から見合いの日取りが伝えられた。
昨日の今日、普段もこのくらいスピーディに仕事をしてくれたら良いのに…と、愚痴らずには居られない。
先方の女性は確かに綺麗な人なのだ。
本人がこの話を快く思っているかは不明だが、上司は自分のことのように張り切っている。
下手したら、式の段取りまで考えていそうで…少し怖い。
「悟兄ぃには気をつけてね?最悪双子は俺が何とかするし…」
「…ごめんな」
「良いよ。春ちゃんに頼られるって嬉しいもん」
微笑む美咲の優しさに、少しだけ泣きたくなった。
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