🎵wheel of fortune

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上司と相手の付き添いの方は、当人達そっちのけで話を弾ませている。 俺達は"困りましたね"って苦く笑いあった。 暫くして、付き添い2人が"後は若いもの同士で"なんて下手な台詞を残して出て行った。 俺達は、やっぱり"困りましたね"って笑いあった。 「…えっと、ナル…ミ…さん?」 「はい、鳴海嶺…弁護士をしています」 仕事先から直接来たのだと、自分の服装を詫びる彼女に慌てて首を振った。 「全然!良くお似合いです…とっても」 「ふふ…有難うございます」 「あ…俺、季羽春です。キャスターを…」 「知ってます…テレビで、拝見してました」 物腰は柔らかくて、優しくて、彼女の醸し出す雰囲気はやっぱり悟くんを思わせた。 2人きりになれば、それなりに話も弾んで… きっと…きっと、悟くんの事が無かったら惚れていたかもしれない…それくらい素敵な人だった。 「貴方と話していると楽しい…」 「俺もです…でも、…」 決めたじゃないか。 この人は悟くんに似てる、だけど彼じゃない。 俺が好きで、大事にしたいのはこの世でたった一人だけ… 「このお見合い、断っていただけませんか…」 「…はい。……え!?」 「…断れず、この場に来てしまいました。でも、私…」 顔を赤らめて、気恥ずかしそうに俯いてしまった彼女の姿は可愛くて、可愛くて… 「大事な方が、いらっしゃるんですか…?」 「はい…」 この人に愛された人は幸せ物だ… 「俺もです、俺にも大事な人が居ます…」 彼女になら、本当のことを言っても良い様な気がした。 たった、数時間前に知り合っただけの相手なのに… 「その方は、私に…似ている…?」 「はい…とても」 _
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