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彼女は、俺の"大事な人"が男性だと知っても嫌な顔一つしなかった。
微笑んで"きっと素敵な人なんでしょうね"と言ってくれたんだ。
「私の大事な人も…貴方に似ているような気がします」
結婚は出来ない。
だけど、友達になりましょう…
なんて、どちらからとも無く言い出して連絡先を交換した。
照れくさそうに笑いあって、フと店先が騒がしい事に気がついた。
ドタドタと荒々しい足音が近づいてきて、俺達が居た個室の扉が開かれた。
驚く俺達の目の前に、1人の男が転がり込んできた…。
「リョウさん!!」
文字通り、勢いに負けて転がり込んできた彼は鳴海さんの足元に座って彼女の手を取った。
「リョウさん!お、お見合いなんて駄目です!!」
"帰りましょう!"
"俺と居ましょう!"
"大好きなんです!!"
周りが見えていないだろう彼は、鳴海さんの手を握って沢山の愛を叫んだ。
彼女の恥ずかしそうにしながらも、どこか嬉しそうな顔を見て…
彼が彼女の"大事な人"なんだって、分かった。
「…分かりましたから、落ち着いて?」
「りょぉさん…」
「……帰りましょう?一緒に」
手を握り返して、嬉しそうに微笑んだ彼女は悟くんとは似ても似つかないほど綺麗だった。
さっきまで、彼と重なっていた彼女の微笑が嘘のように…それは、綺麗で…綺麗で…
「…お幸せに…」
自然と出た言葉だった。
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