🎵wheel of fortune

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「楽しかった?」 「…あれ…どうしたの?こんな所で」 不意に腕を引かれて振り返れば、そこには今まさに会いたかった人が立っていた。 俺の想いが通じたのかなって…少し自惚れてみる。 「どうしたの?じゃねぇよ…」 鼻の頭が赤くて、俺の手を握った手が冷たかったから…きっと、ずっと待っていてくれたんだろう。 まだ、寒い…この時期に。 「あのね…俺、お見合いしてきたんだ」 「……」 悟くんが、何でここに居るのかは分からない。 それなのに、聞かれても居ないのに俺は1人でペラペラ話し出す。 「凄く素敵な人で、俺には勿体無いくらいだったの…」 「……」 「雰囲気とか、笑った顔が貴方そっくりでドキドキしちゃった」 「……そう」 「でもね、やっぱり"愛しい"にはなりそうに無かったんだ」 俺の話を黙って聞いて、複雑そうな表情を浮かべる悟くんの手を引き寄せて小柄な身体を抱き締めた。 人目や、世間体はどうでも良いと思った。 今は、ただ…この人を抱き締めたい、触れたい…その一心。 「……んな事言って、結婚すんだろ」 「しないよ…出来っこない」 首筋に顔を埋めて、深く息を吐き出した。 くすぐったそうに身じろぐ身体を腕の中に閉じ込めて、赤くなった耳に唇を押し付けた。 「俺は貴方が好き、貴方だけを愛してるの…」 「しゅ…んくん…?」 結婚も子供もいらない…。 一番大切な人が、傍に居てくれたらそれ以上の幸せは無い。 「貴方じゃなきゃ…駄目なんだ…」 「…知ってるよ…泣き虫」 泣いてねぇよ……バカ…。 _
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