🎵wheel of fortune

12/13

800人が本棚に入れています
本棚に追加
/255ページ
暫くして、一通の招待状が届いた。 ―…結婚する事になりました。 雲ひとつ無い快晴、緑の多い教会は親しい人だけを呼んだのか…とてもこじんまりとしていた。 純白のウェディングドレスを纏い、幸せそうに微笑む彼女はやっぱり美しかった。 「…季羽さん…来てくれて、有難うございます」 「お綺麗ですよ鳴海さん!いや…村田、さん?」 「ふふ…有難うございます」 胸に抱いたブーケで口元を隠して、目を細める姿は、悟くんと被る事は無かった。 ただ、ただ幸せそうな女性がそこに居て、自分の事のように胸がジンと熱くなった。 「幸せになってくださいね」 「ええ勿論…」 そう言って、彼女はそっとその胸に抱いていたブーケを差し出してきた。 「……鳴海さん?」 「貴方にも幸せになって欲しいから…」 "貴方にあげようって決めていたの" 悪戯が成功した少女のように、小さく笑った彼女から…恐る恐るブーケを受け取った。 真っ白なバラから濃厚な香りが漂って、胸がどんどん熱くなる。 「お…俺…」 視界が滲んで、バラの花弁に雫が落ちる。 「結婚が幸せの全てでは有りません。貴方方なりの幸せの形、見つけてくださいね」 幸せで包まれた空間で、俺は静かに涙を落とした…花嫁に寄り添ってもらいながら。 _
/255ページ

最初のコメントを投稿しよう!

800人が本棚に入れています
本棚に追加