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暫くして、一通の招待状が届いた。
―…結婚する事になりました。
雲ひとつ無い快晴、緑の多い教会は親しい人だけを呼んだのか…とてもこじんまりとしていた。
純白のウェディングドレスを纏い、幸せそうに微笑む彼女はやっぱり美しかった。
「…季羽さん…来てくれて、有難うございます」
「お綺麗ですよ鳴海さん!いや…村田、さん?」
「ふふ…有難うございます」
胸に抱いたブーケで口元を隠して、目を細める姿は、悟くんと被る事は無かった。
ただ、ただ幸せそうな女性がそこに居て、自分の事のように胸がジンと熱くなった。
「幸せになってくださいね」
「ええ勿論…」
そう言って、彼女はそっとその胸に抱いていたブーケを差し出してきた。
「……鳴海さん?」
「貴方にも幸せになって欲しいから…」
"貴方にあげようって決めていたの"
悪戯が成功した少女のように、小さく笑った彼女から…恐る恐るブーケを受け取った。
真っ白なバラから濃厚な香りが漂って、胸がどんどん熱くなる。
「お…俺…」
視界が滲んで、バラの花弁に雫が落ちる。
「結婚が幸せの全てでは有りません。貴方方なりの幸せの形、見つけてくださいね」
幸せで包まれた空間で、俺は静かに涙を落とした…花嫁に寄り添ってもらいながら。
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