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春ちゃんのお誕生日を過ぎて暫く。
「俺たち、付き合ってるから」
春ちゃんの手を握って、俺達にそう告げた兄ちゃんの顔はとても優しかった。
あまりにも突然で吃驚したけど、俺は春ちゃんが悩んで居る事を知っていたし…
泣いているのを何度も慰めてきた。
だから、春ちゃんが幸せそうに笑っているのが凄く嬉しかった。
「春ちゃん、良かったね!!」
嬉しくて嬉しくて、ギュって抱きついて泣いちゃった。
何でお前が泣くんだよ、って笑いながら頭を撫でて貰って胸がほっこり。
隼も、始めは吃驚していたけど兄ちゃん達が幸せなら…って笑ってた。
春ちゃんの誕生日前日、死んだお魚みたいに濁った目をしてた悟兄ぃを見ていたから…
無事に結ばれて…俺も幸せ。
だけど…
"何で…"
温かい笑い声の中で微かに聞こえた呟き…
視線を向ければ、苦しそうに顔を歪めた一也が兄ちゃん達を見つめてた。
「かず…?」
思わず声を掛ければ、濡れた瞳と目が合った。
どうしてそんなに悲しそうなのか、俺にはわからない。
「み、さきちゃ…」
震える声…
一也は一瞬俺を見ただけで、部屋に走って行ってしまった。
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