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「…ぐす、ごめん…」
「…あのさ、貴方は誰が何と言おうと俺の弟だよ」
久々に泣いたせいで、頭がズキズキする。
頭を撫でてくれていた兄は、俺の顔をじっと見つめて何処か悲しそうな顔…
「母さんより、悟兄ぃより、誰より先に貴方の誕生を初めに見てるんだからね」
静かに告げられた言葉に目を見開いて、俺はポカンと開いた口がふさがらない。
「隼くんが、生まれた瞬間を初めに見たのは俺なんだ!」
…生まれた瞬間なんて、誰も覚えているはずが無い。
たった数分早く生まれただけの兄だって例外じゃない…
産声をあげる事に一生懸命になっていたはずじゃないか…
「だから、拾われて来たとか…冗談でも言わないで!」
小さい手が俺の頭を抱きこんで、グリグリ頭を押し付けてくる。
痛いよって、訴えても離してくれない。
「…俺、父さんにも母さんにも…似てないんだよ」
「俺だって、似てるなんて思ったことありません」
「俺、…か、ず…と似てるって言われた事、無いんだよ」
「生憎、俺も言われた事無いです」
「ふっ…うぅ…」
「隼くん、誰に何て言われても良いじゃん」
今日は、涙腺の調子が悪いんだ…
だから、兄の言葉にボロボロ涙がこぼれてしまう。
後々考えたら、絶対大した事言ってないんだ…
なのに、心が弱ってるからどんな言葉でも魔法に聞える。
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