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「ただいまぁ…」
幾つかの収穫をカバンに詰めて帰宅すれば、家の中は甘い匂いが充満していた。
「あ、お帰り…兄貴!」
キッチンから匂いの現況が顔を覗かせた。
「隼…チョコ作ってるの?」
「うん、チョコケーキ!夕飯の後に皆で食べようと思って」
「ふふ…楽しみにしてる」
「任せてよ!あ、春くんも帰ってきてるよ?」
ウキウキしてる隼から春の情報をゲットした俺は、もう一度楽しみにしているよーって隼の頭を撫でて春の元へ。
春の部屋。扉をトントンって叩けば"開いてるよー"って声。
中に入れば、机に向かって勉強している春の背中。
「春くん、勉強中?」
「うーん…ちょっと…、何?」
俺の声に、間延びした返事をして丁度区切りが良かったのかな…ペンを置いた春がこっちを向いた。
「特に用はないんだけど…」
「そうなの?あ、下凄い甘い匂いしなかった?」
「した!隼がケーキ作ってるって…」
「そうそう、俺もう楽しみでさぁ!」
キラキラ笑顔で笑う春。
「春くん、そんなにチョコ…好きだったっけ?」
「そうじゃないけど…今年、1つも貰わなかったから」
「え…毎年沢山貰ってくるじゃん!!」
「そうだけど…、だって今年は悟くんがいるから…」
春の言葉を聞いて、肩にかけたままのカバンが一気にズシっと重くなった気がした。
春は一個も貰ってないんだって…
義理チョコに限定したからって…貰ってしまった自分が少し後ろめたい。
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