🍀SaltySweet

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家に帰れば、案の定家の中は甘ったるい香りに包まれていて… キッチンを覗けば、末の弟が鼻歌交じりにチョコレートを掻き混ぜていた。 「隼…、今年はケーキなの?」 オーブンに入ったスポンジを目ざとく見つけて、声を掛ければ驚いたように振り向いた。 「うわっ!もう、帰って来たなら先に声掛けてよね」 不機嫌になった隼と軽く言葉を交わして"超絶楽しみにしてる!"って声を掛けて部屋に篭った。 夕飯までには時間は有るし、復習でもしようって机に向かった。 暫くして扉の叩かれる音、入ってきたのは、悟くん。 特に用は無いって…気まぐれなのかな? それでも、会いに来てくれただけで嬉しくて仕方が無いんだけどさ。 話題が無いなら、俺が提供すればいいだけの事…丁度、隼がお菓子作って居たんだしね。 でも、何だろう…流れで今年はチョコを貰ってないって伝えたら悟くんは急にソワソワし始めた。 多分、悟くんはチョコ…受け取って帰ってきたんだろう。 別に良いのに…、毎年貰ってくる事くらい知ってるんだから。 それ位で、目くじら立てるほど心狭くないよ…何て。 でも、それだけじゃないみたい…口を開いては止まって、何か言いたそうに俺を見ては口を閉じる。 何だか、悟くんらしくないね…。 「…俺にチョコ無いの?」 暫く1人で格闘していた悟くんが、漸く声を発したと思ったら何とも予想外。 「何で俺が悟くんにあげなきゃいけないの?」 自分で思っていたよりも低い声が出た。 まさか、悟くんがバレンタインを期待していたとは思わなかった。 俺と同じで、毎年嫌々チョコを貰ってきたと思っていたから。 でも、目の前に居る悟くんは俺の言葉にショックを受けたみたいで肩がしょぼーんって落ちてる。 「…そうだよね…」 って、あからさまに落ち込んだ様子で部屋を出て行こうとするから咄嗟に呼び止めたんだけど… 気付かないで行ってしまった…。 本当に、俺から欲しいの? 俺、男なんだよ… 恋人で、彼女…かも知れないけど…欲しいの? あぁ…どうしよう… _
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