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夕飯の時間になっても、悟くんの様子は変わらない。
寧ろ悪化しているような気がする…。
隼の作ったチョコレートケーキをフォークで突いては深い溜息…、隼が不安そうな顔してるじゃないの。
「兄貴…、ケーキ…不味かった?」
一向に食べる気配の無い悟くんに耐えかねて、隼が声を掛けると"そんな事ないよ!!"って慌てて首を振ってケーキを食べた。
「隼、美味いよ?お前のケーキ」
よしよしって隼の頭を撫でて、笑いかければやっと安心したように笑ってくれた。
たかが俺からのチョコで何でこんなに落ち込めるのか、俺には理解できません。
「ねぇ…春くんは兄貴にチョコ、あげねぇの?」
隼と仲良く食器を洗いをしていまして…、いきなり核心を突いてくるこの子は恐ろしい。
「あげないよ、俺男だしね」
「俺も男だけど、皆にケーキ作ったじゃん」
「それと、コレは違うでしょう?」
「でも、兄貴絶対期待してたと思うよ?」
隼のキラキラした目が俺の視線を逃がさない。
でも、言われなくても期待してたんだろうなって事は…あの落胆振りを見れば分かる。
今だって、一也を抱き締めてボケーってしてるしね…
「何か今までと逆だね。今までは春くんが兄貴に懐いてる感じだったのに…」
「そうかな…」
確かに、最近の悟くんは以前の俺みたいだ…
何か有れば"悟くん!悟くん!!"って追いかけてた俺みたい。
なら、構ってあげなきゃどうなるか…俺は知ってる。
チョコレート…、悟くんが望んでるならあげようじゃないか。
男でも、彼女だし。
今は、逆チョコとか友チョコとか何でも理由つけて渡して良いんだからさ。
でも、素直にあげる気なんかさらさら無い…
だって、俺はこのイベントが大嫌いだから。
「隼、チョコレート余ってない?」
俺の愛に気付くか気付かないか、楽しみになってきた。
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