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お皿の上に、歪なウサギが四羽。
「お待たせ…起きれる?」
気丈に振舞っていても、呼吸は荒くて苦しげな一也の額に手を当てれば、
水で冷えた手が心地いいのか、少しだけ表情が和らいだ。
「……起こして」
両手を俺に伸ばして、ふにゃりと笑うから…しょうがないなぁ、何て言いながら抱き起こす。
何時もは冷たく感じる身体は、ホカホカしてて…辛いだろうなぁって悲しくなる。
だって、抱き起こした一也を自分に寄りかからせれば、ぐったりと身を預けるから…
「下手くそ…。ねぇ、食わせてよ」
皿に乗った俺の傑作を馬鹿にしたように笑って、
水分を沢山含んだウルウルの目で俺を見上げる。
…あぁ、可愛いなぁ…何て、こんな時でも思っちゃうお兄ちゃんを許してね。
「煩いな、頑張ったの!ほら、あーん」
りんごウサギにフォークを指して、口元に運べば躊躇いなく食べてくれる。
あっという間に姿を消した2羽のウサギが、何だか凄くうれしかった。
「ちゃんと食べれたね」
「……ん…」
きゅうって俺に抱きついて、駄々っ子みたいに胸に顔を摺り寄せるから少し擽ったい。
「もう少し、寝よっか…ね?」
優しく髪を撫でてやれば、小さく頷くから…そっとベッドに寝かせてやる。
肩までしっかり毛布を掛けて、ポンポンって…子供を寝かしつけるみたいに叩いてやるの。
母さんが、俺を寝かしつける時…よく、してくれてた。
程なくして、小さな寝息が聞こえてきた。
次に起きた時には、少しでも熱が下がっていてくれたら良いな…
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