💡甘え上手

4/9

800人が本棚に入れています
本棚に追加
/255ページ
「……っくしゅ」 一也のベッドから離れて、部屋に戻ろうとした瞬間、凄く小さなクシャミ。 そうだった…、本日の問題児は一人じゃなかった。 足音を殺して一也を起こさないように、二段ベッドの梯子を上り、上の段を盗み見る。 薄紫の毛布を頭まですっぽり被って丸まる姿は、心なし震えているように見えた。 「……隼?」 名前を呼べば、ビクって大きく跳ねたから…眠っている訳ではなさそうだ。 ベッドに乗り上げれば、大人2人分の体重を受けてベッドが少し軋んだ。 「…体調はどう?苦しくない?」 毛布の上から身体を摩れば、少しだけ顔を出した隼。 無言のまま俺をじっと見つめて"だいじょうぶ…"って弱弱しく笑った。 あぁ…、何でこの子はこうなんだろう…。 苦しい、寂しいと感じれば、素直に言わずとも、無理矢理な理由をつけて自分を呼びつける一也と違って、 気付いてくれたら良いな… って、思いながら苦しさも寂しさも我慢しちゃう隼の方が、ある意味たちが悪いよね。 「…嘘言わないの、顔…まだ熱いじゃんか」 赤く上気した顔を覗き込んで、頬を両手で包み込めば、これまた熱い。 これじゃあ、咽が渇くに決まってる… 何度も部屋に来たんだから、呼んでくれたら良かったのに…。 急いで水を用意して、嫌がる隼に無理矢理飲ませる… 冷たい水が身体に染み渡る感覚って気持ち良いよね。 「隼…、こんな時くらい甘えて良いんだよ?」 お互いの額をコツンと当てて、語りかければ見る見る隼の目尻に涙が溜まって、嗚咽が混じる。 「…ひくっ…、ぁ、あま痛い…」 両手を懸命に伸ばすから、毛布ごと隼を抱き締める。 咽が痛い、苦しい、寂しいよ…って、どんだけ我慢してたのさ…。 「…大丈夫だよ、直ぐ良くなるからね」 笑いかければ、少しだけ表情が綻んだ。
/255ページ

最初のコメントを投稿しよう!

800人が本棚に入れています
本棚に追加