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「……っくしゅ」
一也のベッドから離れて、部屋に戻ろうとした瞬間、凄く小さなクシャミ。
そうだった…、本日の問題児は一人じゃなかった。
足音を殺して一也を起こさないように、二段ベッドの梯子を上り、上の段を盗み見る。
薄紫の毛布を頭まですっぽり被って丸まる姿は、心なし震えているように見えた。
「……隼?」
名前を呼べば、ビクって大きく跳ねたから…眠っている訳ではなさそうだ。
ベッドに乗り上げれば、大人2人分の体重を受けてベッドが少し軋んだ。
「…体調はどう?苦しくない?」
毛布の上から身体を摩れば、少しだけ顔を出した隼。
無言のまま俺をじっと見つめて"だいじょうぶ…"って弱弱しく笑った。
あぁ…、何でこの子はこうなんだろう…。
苦しい、寂しいと感じれば、素直に言わずとも、無理矢理な理由をつけて自分を呼びつける一也と違って、
気付いてくれたら良いな…
って、思いながら苦しさも寂しさも我慢しちゃう隼の方が、ある意味たちが悪いよね。
「…嘘言わないの、顔…まだ熱いじゃんか」
赤く上気した顔を覗き込んで、頬を両手で包み込めば、これまた熱い。
これじゃあ、咽が渇くに決まってる…
何度も部屋に来たんだから、呼んでくれたら良かったのに…。
急いで水を用意して、嫌がる隼に無理矢理飲ませる…
冷たい水が身体に染み渡る感覚って気持ち良いよね。
「隼…、こんな時くらい甘えて良いんだよ?」
お互いの額をコツンと当てて、語りかければ見る見る隼の目尻に涙が溜まって、嗚咽が混じる。
「…ひくっ…、ぁ、あま痛い…」
両手を懸命に伸ばすから、毛布ごと隼を抱き締める。
咽が痛い、苦しい、寂しいよ…って、どんだけ我慢してたのさ…。
「…大丈夫だよ、直ぐ良くなるからね」
笑いかければ、少しだけ表情が綻んだ。
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