💡甘え上手

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横には隼が、俺の服を掴みながら眠っている。 前には一也が、俺に抱きつきながら満足そうに笑っている。 「お前ね…このベッドに3人は無理だって、分るでしょ?」 「…貴方が隼くんに捕まるのが悪い」 何だその理屈…。 流石の俺でも、可笑しいって事分かるよ。 でも、叱れない俺が兄馬鹿なのか…ただ、甘えてくれてるんだって事を喜んでしまっているのか… 「ねぇ…、おまじないして?」 悶々と悩む俺に、突然のお願い。 風邪を引いた時のおまじない… 父さんや母さんが、俺達が早く良くなりますようにって… 「悟兄ぃにしてもらいなよ」 「今居ないじゃん」 そうだけど… 今更照れるなよ、って一也は笑うけど…照れくらいのは仕方ない。 「…したら、下戻りなよ?」 「分かったから…」 早くって、抱き着く腕に力が篭る。 「早く、風邪が治りますよーに」 柔らかい頬を両手で包み込んで、チュって額にキスをした。 キスってさ、何処に…何回しても、恥ずかしいものだよね。 唇を離して、恐る恐る一也を見れば、何とも可愛いとろける笑顔…。 「…んふふ、ありがと」 あぁ…不味いな、流されるパターンだ。 首に絡まる腕を解く術を俺は知らない。 近づいてくる一也の顔を拒む術を俺は知らない。 「ちょっと…人のベッドでイチャつかないでくれる」 口がくっ付く!って肩をすくめた瞬間、冷ややかな声と共に後ろに引っ張られた。 突然の事で、抵抗する暇なく一也ごと後ろに転がれば、これまた何とも不機嫌そうな隼の顔。 「あ…隼くん」 「かず…おまじないは口にはしねぇよ」 罰が悪そうに視線を反らす一也にちょっとだけ、笑っちゃった。 "隼に有難うね"って言えば"別に…"ってあしらわれた。 本当に素直じゃない… _
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