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=春=
上司との飲みに付き合わされて、何時もより遅い帰宅。
案の定、家の中は真っ暗で…流石に悟くんも待っててくれなかったみたい。
悲しいなぁ…何て、思いながら2階に上がれば扉から明かりが漏れている部屋が1つ。
そこは双子の部屋で、その片割れは確か泊りがけで仕事のはず…ならば、今日の住人は…
「…かず?」
単なる電気の消し忘れかもしれないし、静かにそっと扉の隙間から顔を覗かせて中を見る…。
「・・・ぅ…、ってぇ…」
すると、ベッドの上で蹲って苦しそうにしている姿を見つけて俺は思わず駆け寄った。
「かず、どうした!?」
「っ…春ちゃん!?…まだ、帰ってなかったの?」
毛布を剥ぐって出てきたのは、顔を真っ赤にして身体を丸める一也。
俺のスーツ姿を見て驚きながら、俺から毛布を奪い取って再び潜り込んでしまった。
「俺は飲み会…どうしたんだよ、顔…真っ赤じゃん」
膨れ上がった毛布をポンポン叩いて、自分から離すのを待てば、頭が痛いとくぐもった声が聞こえた。
優しく毛布をめくって一也の額に手を置くと、基礎体温の低いコイツにしては熱い温もりが伝わってきた。
「…風邪だね、薬は?」
「いらない…」
「要る要らないじゃないの!ほら、丸まってないで起きて?」
薬を拒む一也の二の腕を掴んで引っ張れば、一層顔を歪めて悲鳴を上げた…
「あくっ…ってぇ!!」
反射的に手を離せば、重力に従ってベッドに落ちる一也。
腰を抑えて、再び蹲ってしまった一也の服を捲り上げれば、腰には大きな湿布。
「…どうしたコレ?」
「いや…、稽古でミスっちゃって…」
何でも、同僚に渡された荷物が思いの外重くて、ギクっと…ギクっといっちゃったそうで…
「お前…馬鹿?」
若いくせに腰やるとか、馬鹿でしょ…
帰る前に整体は行って来たみたいだけど、痛み止めが切れた上に熱も出て来たって所かな。
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