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コイツは何の意地なのか、決して体調が悪い事を自分から言わない。
だから、俺や一也が体調をしっかり見極めなきゃいけない…。
「とにかく、今日は仕事休め!良いな!」
「嫌だ!!今日は大切な日なんだもん、絶対に行く!!」
玄関への廊下を遮る俺の肩を強引に押しのけて、玄関へと走る美咲にプチっと堪忍袋の緒が切れた。
「美咲!お前いい加減にしろ!!」
走る背中に怒鳴れば、ビクって肩が跳ねたのが分かった。
自分でも、まだこんな怒鳴り声が出せるのかと吃驚だ…
「…ちゃ、に…る、も…か」
「……え?」
「春ちゃんになんて、分かるもんか!!」
震える声が微かに聞こえたと思えば、振り返った、目に涙をいっぱいに溜めた美咲に睨まれた。
怒鳴ったせいで、苦しそうに咳き込むから…
慌てて駆け寄ったのを、力いっぱい振り払われる。
「春ちゃんなんて、大っ嫌い!!」
叫ばれた瞬間、頬に激しい痛みが走った。
ソレが、美咲に殴られたのだと分かった時には既に、彼の姿はなくて…
ジンジン痛む、赤くなった頬を押さえる俺だけが、玄関に佇んでいた。
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