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「また、派手にやられたねぇ…春くん」
呆然と立ちすくむ俺に掛けられた、緩い声。
振り向かなくても分かる、俺の大好きな声…
「…聞いてたなら、加勢してくれたら良かったのに」
「嫌だよ、俺…美咲に嫌われたくないもん」
振り返れば、案の定ふにゃふにゃした笑みを浮べている悟くんがいて…
頬を冷やすみたいに、冷たい手で頬を包み込まれる…
ソレが何とも心地よくて、緊張の糸も解けたみたいに深い、深い溜息が出た。
「本人が、大丈夫って言ってるんだから…」
「悟くんは、放任主義過ぎるんだ。俺たちは、父さんから弟たちを預かってるんだよ?」
「そうだけど、皆もう…ちゃんとした大人なんだから」
"もう少し、信じてあげなきゃ"なんて、お兄ちゃんの顔して言われたら…
俺はもう、何も言い返す事が出来ない。
こんな時ばっかり、真面目な顔をして…ズルいよ、本当。
あぁ…今回は、何事もなく無事に帰ってきてくれますように。
俺は、そう願いながら美咲の出て行った玄関を見つめるのだ。
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